入笠山付近の小川 5月初旬  

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【基礎データ】
○所在地:長野県
○混雑度:●●○○○
 30年振りに訪れた川


 

 
 小学1年生の夏、初めての夏季学校で長野県の入笠山の山荘に泊まった。もう30年も前のことである。新宿から急行列車に乗って富士見まで行き、そこからバスで山の途中まで登り、最後は徒歩で山荘まで行った記憶がある。雨が降っていた。

 滞在中、「リーダー」(夏季学校の子供たちの引率役のおにいさんたち)の案内であちこち歩いたが、小川の脇の林道を歩くと地層が露になった崖があり、そこで化石が出るといってみなで一生懸命石をひっくり返したり割ったりした。私は見つからなかったが、リーダーが集めたものを山荘で分配してくれ、それは少なくとも高校に入る頃まで家に飾ってあったのを思い出す。貝の化石だった。

 昨夏、子供たちを同じ場所に連れていってやろうと入笠山まで車で行った。同じ場所はわからずじまいだったが、いかにも化石が出そうな地層は見つかり、一生懸命探した。化石は見つからなかったが、楽しかった。

 林道脇の小川を覗くと、ごく浅い、文字どおりの小川なのだが、イワナが定位している姿が見えた。それ以来、この川で一度釣ってみたいと思っていた。
 

 5月初旬、一人でこの川へ入る。見てのとおり、水量は極めて少ない。渓流は普通、ざーっといういう水音が心地よいものだが、無音であるか、せいぜい「ちろちろ〜、ころころ〜」というくらいの音しかない。

 午後12:30頃の入渓時の水温は10度。下界は大雨であるが、入笠山に向けて上ってくる途中で雨雲を通り抜けてしまい、ほとんど雨は降っていない(その代わり、途中の山道は想像を絶する濃霧であった(笑))。

 午後1時過ぎ、最初のヒット。かわいいイワナである。ポイントは、右の写真。この川では、この位水深がないと厳しかった。

 これほど水量も姿を遮蔽してくれる白泡も少ないと、アプローチは非常に難しかった。魚が開きに出ていなかったのがもっけの幸いであるが、いずれにせよ、「超」静寂のアプローチを必要とした。

 典型的な落ち込みではない、難しいポイントに出くわした。2段になって落ちており、一つ一つのポイントがすごく小さい。岩にも囲まれている。おまけに倒木が前に横たわっている。

 しかしこういうところはえてして魚が残っているものだ。ひっかかり覚悟で倒木の向こう側に投入すると、運良くフライがポイントに入り、15cmほどしか流れなかったのにイワナが出た(#14アダムスパラシュート)。朱点がきれいなイワナ。サイズは20cmほどだが、この川ではトロフィー級だろう。右の写真が出たポイント。写真中央、倒木の向こう側の岩と岩の間。

 標高は高く、5月だというのに場所によっては残雪も見られた。

 釣りが楽しい川では必ずしもない。個人的な、思い出の川である。

 おそらくこれが、30年前に滞在した山荘だと思う。周囲の環境は記憶のとおりだし、建物も当時の面影のままであった。あのときのリーダーさん、山頂のアンテナの役割や、山道の途中で遠望できる諏訪湖のこと、いろんなことを教えてくれたが、いまはどうしているだろうか。そして当時の仲間たち。。。

 入笠山に行った翌年からは、YMCAが主催する夏季学校に毎年参加した。清里にも行った。学校寮の一つを借り切った宿舎に泊まり、いまフライを楽しんでいるあの川やこの川で手足を清流にひたし、歓声を上げた。掬って飲もうとした水は掌の中で陽の光に輝き、なぜかちょっといけないことをしている気がしたからか、わずかな量を飲んだだけなのにのどが潤った気がした。あの楽しさを、次は子供たちに教えてやらねば。



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